『ファイナルファンタジーXI』(以下、『FFXI』)とゆかりのある人物をゲストに迎え、プロデューサーと対談を行うスペシャル企画“プロデューサーセッション -WE DISCUSS VANA’DIEL-”。 そのSeason2では、藤戸プロデューサーと『FFXI』中期~後期の開発スタッフとの対談により、各拡張データディスクや追加シナリオの制作エピソードをうかがっていく。
第9回のテーマは、追加シナリオ『ヴァナ・ディールの星唄』の物語。プロデューサーセッションSeason2 第7回(『アドゥリンの魔境』編)から引き続き、佐藤弥詠子さんと齋藤富胤さんに、『FFXI』の最終章となる物語がどのように作られていったのかを振り返っていただいた。
『FFXI』の集大成となる最終章シナリオとして、2015年5月14日にスタート。同年11月10日にラストの第3章とエンディングが実装された。シナリオの進行には、すべての拡張データディスクのミッションをある程度進行する必要がある。
物語ではまず、未来から来たという少女・イロハが登場。冒険者は彼女から、ヴァナ・ディールに滅びの危機が迫っていることを聞かされる。そして滅びの未来を回避すべく、冒険者はイロハとともに奔走。これまでの物語の主要NPCも数多く登場し、物語は壮大なクライマックスへ向けて進んでいく。新たなエリアとしては、色あせた世界であるエスカ-ジ・タとエスカ-ル・オン、“ひんがしの国”にある醴泉島(れいせんじま)が追加された。
システム面では『ヴァナ・ディールの星唄』の実装と合わせ、だいじなもの“星唄の煌めき”による冒険のサポートが導入された。これは、シナリオを進行させるにつれてヴァナ・ディールの冒険がより便利になっていくというもの。取得経験値やキャパシティポイントなどへのボーナスや、フェイスの呼び出し数の増加、各種コンテンツの待ち時間やコストの緩和など、さまざまな恩恵が恒常的に得られるようになる。
バトルコンテンツでは、ギアスフェットとドメインベージョンが実装された。また、いわゆる伝説武器群(※)の新たなシリーズとしてイオニックウェポンが加わっている。ほかにも、ジョブポイントによる強化の最終段階であるジョブマスターや、モグハウスの“2階”が実装。魔法やジョブアビリティの効果範囲表示や、ステータスアイコンのタイマー表示も追加されるなど、さまざまな部分がより便利になるよう調整されている。
『FFXI』シナリオ&イベントプランナー。ウィンダスミッションをはじめ、『プロマシアの呪縛』、『ヴァナ・ディールの星唄』、『蝕世のエンブリオ』などのシナリオを担当。『プロマシアの呪縛』のエンディング曲『Distant Worlds』の日本語原詩、『アドゥリンの魔境』のエンディング曲『Forever Today』や『ヴァナ・ディールの星唄』のエンディング曲『ヴァナ・ディールの星唄 -Rhapsodies of Vana'diel』の作詞も担当している。
『FFXI』元シナリオ&イベントプランナー。『ジラートの幻影』、『プロマシアの呪縛』、『アトルガンの秘宝』のイベントなど、さまざまなカットシーンの演出を担当。『アドゥリンの魔境』、『ヴァナ・ディールの星唄』ではストーリー全体の監修も手掛ける。
最初の物語案は“ひんがしの国”編だった
まず『ヴァナ・ディールの星唄』の開発はどのように始まったのでしょうか?
- 佐藤
じつは初期案では“ひんがしの国”編だったんです。それをやめて、いまの形になったんですよね。
- 齋藤
最終章を作るにあたり、まずは「どこを舞台にする?」というところから話し合ったのですが、佐藤さんが言ったように、最初は“ひんがしの国”に行く案がありました。ですが、「まったくの未知である“ひんがしの国”にいきなり行って、そこで『FFXI』を締めくくるのも違うよね」ということでメインの舞台にする案はボツになり、「より『FFXI』の集大成的な内容にしよう」という流れになったと記憶しています。
- 藤戸
もちろん「できることなら“ひんがしの国”で遊びたい」という想いもありました。でも、この『ヴァナ・ディールの星唄』の企画では、たくさんのエリアを作るという想定はなかったんです。
- 齋藤
そもそも、ひとつやふたつのエリアだけでは“ひんがしの国”は表現しきれませんし、それ以前の問題ではあったのですが、最終的には醴泉島という形でひんがしへの想いは残すことができました。醴泉島は、竹林を作るのがすごくたいへんで、制作時は背景班が「カメラが回り込むと竹林が消えるんだよ……」と悩んでいましたね。かなりがんばって作っていたと思います。
初期の“ひんがしの国”編のプロットがあったから、イロハというヒロインが生まれたのでしょうか?
- 佐藤
たしか、そうだったと思います。
- 齋藤
ヒロインのイロハは伊藤さん(伊藤泉貴氏。『アドゥリンの魔境』、『ヴァナ・ディールの星唄』のディレクターを担当)がすごく推しまくっていましたね。ちなみに、漢字では“五郎八”(※)と書きます。
※伊達政宗の長女である五郎八姫(いろはひめ)が由来。 - 佐藤
伊藤さんのこだわりでしたよね。
- 藤戸
一方で自分から見た『ヴァナ・ディールの星唄』は、“お話を進めていくと、どんどん冒険が楽になっていく”というコンセプトの印象が強かったですね。そこも大枠は伊藤さんの設計だったと思います。
“星唄の煌めき”(※)によるサポートは大盤振る舞いでしたからね。
※『ヴァナ・ディールの星唄』を進めることで入手できるだいじなもの。経験値取得量アップやフェイスの呼び出し上限数の増加、各バトルコンテンツの再挑戦にかかる時間が短縮されるなど、さまざまな恩恵が得られる。- 藤戸
アサルトの“皇国軍認識票”が10分に1枚もらえる(※)ようになったりするのですが、「本当にそこまでやっちゃうの?」という感じでした(笑)。
※『ヴァナ・ディールの星唄』の報酬である、だいじなもの“星唄の煌めき【三奏】”を入手すると、地球時間で1日1枚だった“皇国軍認識票”の支給が、10分で1枚に短縮される。
毎回「今回で終わる」くらいの覚悟で開発に挑んでいた
それ以前の『FFXI』の物語でも何度かヴァナ・ディールに危機が訪れましたが、『ヴァナ・ディールの星唄』では「本当にヴァナ・ディールが崩壊するかもしれない」という状況になりました。そこまでの危機を描いたのはなぜでしょうか?
- 佐藤
『FFXI』としては“最後のミッション”として制作していましたからね。ですから「これで『FFXI』のストーリーも最後だし、このまま放っておくと『FFXI』自体もなくなっちゃうかもしれない」というメッセージを込めました。……けっきょくは最後ではなかったですけどね(笑)。
- 齋藤
『ヴァナ・ディールの星唄』だけでなく、開発陣は拡張データディスクや追加シナリオのたびに「今回で終わる」くらいの覚悟で挑んでいました。終わらなかったのはプレイヤーの皆さんが遊んでくれているからこそですね。
- 佐藤
その通り!
- 齋藤
『FFXI』のようなオンラインゲームは、人がいて初めて成立します。人々がヴァナ・ディールから去ってしまったら、“『ヴァナ・ディールの星唄』を作って『FFXI』は終了”、という悲しい未来もあったかもしれません。
- 佐藤
ですから、いまも続いているのは本当にありがたいですね。
『ヴァナ・ディールの星唄』では主要NPCが総登場ということで、これまでのシナリオと整合性を取るのはたいへんだったと思いますが、その点はいかがでしたか?
- 齋藤
たいへんでしたね……(笑)。開発にあたって、シナリオ上の矛盾や不整合が起こらないよう、時系列やフラグの管理がわかるように資料を作っていたのですが、あくまでそれは内部用でした。それで、いざ実装してみると、多くのプレイヤーさんが「なぜかシナリオが進まない!」という事態になってしまい……。そこで、その内部資料をもとに、ストーリーが進行しないときの対応リストを作って、すぐに公式フォーラム(※)に投稿したんです。
※スレッド: 「ヴァナ・ディールの星唄」が進行しない場合
- 佐藤
ほかのシナリオが進行の途中だと、『ヴァナ・ディールの星唄』の進行も止まってしまうことがあるんですよね。
- 齋藤
当時は『ヴァナ・ディールの星唄』を遊ぶために復帰した人も多く、各ミッションが途中で止まっている人も少なくありませんでした。ですから、もし進行に必要な条件が揃っていなかったら、本来はゲーム内のシステムメッセージですべてフォローするのが理想なのですが、細かいところまでは行き届きませんでした。『FFXI』は長い期間運営してきたため、継ぎ足しで作っている部分も多く、フラグまわりを変にいじると大きなバグにつながることもあるのです。そうした兼ね合いもありながら、どこまでフォローするかは悩ましいところでした。
イロハの「ありがとうございました」に重ねられた想い
『ヴァナ・ディールの星唄』の制作体制としては、佐藤さんがシナリオを取りまとめ、齋藤さんはそれをもとに数々のカットシーンを作っていったのでしょうか?
- 齋藤
カットシーンは自分と2~3人のスタッフで作っていました。
ゲームメディアのインタビューでも語られていましたが、齋藤さんは自身でカットシーンを組んで、内容も何度も見ているのに、実際にプレイされたときイロハに「ありがとうございました」と言われて号泣したとか……。
- 齋藤
はい。「これ、ずるいわ~」と泣いていました。あのシーンについては、当初から伊藤さんが「プレイヤーの皆さんに対して、これまでの感謝の気持ちを伝えたい」と言っていましたね。
- 佐藤
イロハが髪を切るのも伊藤さんのアイデアでした。ほかには、プレイヤーと師弟関係にするという設定も伊藤さんの希望だったと思います。企画当初の会議中にすでにそういった話が出ていて、それらの部分が決まってからのスタートという感じでした。“これまでのヒロインを全部登場させる”というのも、その段階で決まっていたかな?
- 齋藤
集大成にすると決めたからには、おそらくそうでしょうね。
- 藤戸
「それぞれの拡張データディスクにも少しずつ触れてもらい、ほかの物語を見てもらうきっかけにしよう」ということを言っていた覚えがあります。ですから、ほかのミッションを全部クリアする必要はなく、ある程度のところまで進めれば『ヴァナ・ディールの星唄』を進行できるという設計になっていました。
- 齋藤
ただ物語の進行上、タイミングによってはヒロインが不在となる期間があるので、その調整は佐藤さんも苦労されていましたね。あと、プリッシュが乙女言葉バージョンで出てきたことも印象深いです。あれは忘れられない出来事でした。
- 佐藤
あそこはこれまでを振り返りつつ、楽しみながらたくさんのパターンを作りました(笑)。
作っている人たちにとっても、これまでの『FFXI』をふり返るいい機会だったということですね。
- 佐藤
そうですね。その通りだと思います。
佐藤さんが『ヴァナ・ディールの星唄』のシナリオの中で、もっとも描きたかったことは何でしょうか?
- 佐藤
先ほどの伊藤さんの言葉もそうですが、“もう本当に終わり”という気持ちで作っていたので、リアルの世界のプレイヤーの皆さんへの「ありがとう」という気持ちを込めて、いろいろとメッセージを書きました。「14年ありがとうございました」というイロハのセリフも、リアルの年月と重ねています。
イロハの師匠(プレイヤー)に対する感謝と、開発の皆さんからプレイヤーの方々への感謝を重ねたシーンは、とても印象的でした。
- 佐藤
エンディング以外にもいろいろなものを重ねていました。“プレイヤーが○○になる”という展開もそうですね。「こんなにも長い時間ヴァナ・ディールで遊んでくれて、がんばって、世界を何回も救ってくれたのだから、もう○○みたいなものだよね?」と(笑)。
あの展開もかなり衝撃でした。
- 齋藤
そういえば、女神アルタナも初めて登場しましたね。
- 佐藤
あれも「最後だから出そう!」と言って登場させました。
最後の敵として“暗闇の雲”を選んだ理由とは?
ラスボスの“暗闇の雲”はどうやって決まったのでしょうか?
- 齋藤
「ラスボスをどうするか?」を話し合う中で、「集大成であれば、歴代の『FF』の中から選ぼう」という流れになりました。そこで「“暗闇の雲”だったらヤバくね?」という話が出て、個人的にも最初に遊んだのが『FFIII』だったこともあり、ほぼほぼ全員の意見が一致して“暗闇の雲”に決まりました。
- 佐藤
すんなり決まっていましたよね。
- 齋藤
ただデザインについては「どうしよう……雲だよね?」と悩んでいましたね。最終的には敵側のNPCであるヴォルトオスクーロが付けている仮面があったので、そこに“もや”が付いていて、不定形にして……という感じで決まっていきました。
『FFIII』は田中さん(田中弘道氏。『FFXI』の初代プロデューサー)が手掛けた作品ということで、ラスボスに“暗闇の雲”を据えたのは田中さんへのリスペクトも感じました。
- 佐藤
それもあったかもしれませんね。ただ、シナリオとしては、最後の戦いを書くときにすごく悩みました。自分は物語を作るとき、できるだけ既存の物語とかぶらないように心掛けています。『FFXI』の中でもすでにたくさんの物語や戦いがあるため、その二番煎じにならないように作っていったのですが……。“暗闇の雲”については強さや設定が全部決まっている状態で、「こんなとんでもない敵を相手に、最後はどうやって勝つのだろう?」というところで、自分としては珍しくかなり悩みました。
冒険者が勝利する筋道が見つからなかったと。
- 佐藤
そんな最中、プログラマーさんか誰かと話している中で「あっ!」と思いついたんです。「相手は雲だから、戦って、風を生んで、雲を散らそう」と。その流れが決まり、ようやく「あー、よかった。これでゆっくり眠れる」となりました(笑)。『FFXI』は長く続いているので、いろいろなボスや戦いかたがかぶりやすいんです。その隙間を縫わなくてはいけないのがたいへんでした。
短絡的に不思議な力で奇跡を起こすわけにもいかないのですね。
- 佐藤
いわゆる“デウス・エクス・マキナ(※)”というやつですよね。神がひと言言って終わるという展開は好みではないんです。それは本当に最後の手段ですね。ですから苦労はしましたが、結果的にはなんとかなりました。齋藤さんがいると、なんだかんだでうまくいので(笑)。
※ラテン語で“機械仕掛けの神”の意味。複雑な状況となった物語の展開を強引に解決し収拾する古代ギリシャの演劇技法。 - 一同
(笑)。
- 佐藤
わからないときは齋藤さんに聞けば、引き出しを開いてパッと答えてくれるし、いつも助かっていました。ですから後の『蝕世のエンブリオ』では「齋藤さん、いないなあ……」と、本当に困りました(苦笑)。
- 齋藤
でも、最終的には無事完結させたじゃないですか(笑)。
- 佐藤
そこは、みんなの力でなんとか。山崎さん(山崎康司氏。プランナー)と久木さん(久木隆氏。プランナー)のふたりが、齋藤さんの代わりにがんばってくれました。
プレイヤーの歌声も募集して作られた最高のエンディング
エンディングで流れる『ヴァナ・ディールの星唄 -Rhapsodies of Vana'diel』についても、制作時の思い出をお聞かせください。
- 佐藤
プレイヤーの皆さんからコーラスを募集して、みんなで歌ったのはすごかったですよね。あれはいいアイデアでした。誰の発案でしたっけ?
- 藤戸
水田さん(水田直志氏。『FFXI』の楽曲制作を担当)のアイデアだったはずです。「もう最後だし、みんなで歌いたい。編集はがんばるので」と言っていた覚えがあります。
前代未聞の試みだったと思います。
- 佐藤
当時すでに14年ものあいだ『FFXI』が続いていたからこそ、できたことだと思います。歴史の重みを感じる。
- 齋藤
その裏で苦労もありました。「エンディングの曲は5分あります」と言われ、「えっ?」と……。
「この曲をゲーム内で使うときは、カットしたり編集したりせずにフルで流すようにしてください」と、水田さんから指定があったという話を聞きました。
- 齋藤
それは言われましたね。「フルで? 5分ですよね?」と返すと、「齋藤さんならできますよ~」みたいな感じで言われて、「あ、はい」と言うしかなく……(笑)。そこで試行錯誤の末、「イロハが手をついたあたりから曲を開始すればいけそう」とか考えながら作業していました。最終的にはいい感じに収まってよかったです。
とてもいい演出でした。
- 齋藤
ありがとうございます。でも、あの演出だと曲の進行に合わせて強制的にシーンが進んでしまうので、ゆっくりイベントを見たいプレイヤーさんをちょっと急かす感じになってしまうんですよね。そこだけは申し訳なかったです。
- 佐藤
歌詞については、これが最後という想いもあって重厚な内容にしました。そうしたら、水田さんから物言いがついたんです。『Vana'diel March』をベースにした曲につける歌詞としては、ちょっと重かったのでしょう。ふだんは言われた通りに手直しするのですが、「最後は格好よく終わらせたいので、今回はちょっと固い感じにしたいです」と、珍しく反論した覚えがあります。水田さんは大先輩なので、「水田さん、たいへん申し訳ありません!」と思いながら(笑)。
この曲を初めて聴いたとき、齋藤さんはどういう印象でしたか?
- 齋藤
泣きましたね。
- 一同
(笑)。
- 齋藤
何回も何回も聴きながら、最後のシーンを作りました。
まだまだ広がりを見せるヴァナ・ディールの世界
『FFXI』の最後の物語として『ヴァナ・ディールの星唄』が作られたはずなのに、『蝕世のエンブリオ』という新シナリオが始まると齋藤さんが知ったとき、どういう感想を抱きましたか?
- 齋藤
「あれ? あれ? 長編が始まる? あれで最後だと言っていたのに?」という感じでした(笑)。ただ、藤戸さんと会ったときに「佐藤さんがシナリオを書かれている」と聞いたので、「ああ、じゃあ大丈夫だ」とも思いました。
- 佐藤
ありがとうございます。でも、先ほども言いましたように、こちらは「斎藤さんがいないじゃん! どこ行った!?」という感じでした(笑)。
齋藤さんは『蝕世のエンブリオ』の物語はご覧になりましたか?
- 齋藤
全部見ましたよ。
- 佐藤
えらい!
- 齋藤
もともと佐藤さんが担当されていたNPCがメインになっていて、「やっぱり、すごいな」と思いましたね。『ヴァナ・ディールの星唄』のときに、それまでやり残していたネタはひと通り拾ったはずなのですが、「確かに、あれには触れていなかったよな」というネタがよく盛り込まれているなあと。
- 佐藤
ガルカの話とかたいへんだったんですよ。
ガルカの転生にまつわる秘密が、ついに明らかになりましたからね。
- 齋藤
ここまで来ると、もう1回くらい、何か新しいネタでお話を作れるのではないですか?
- 藤戸
さすがに、もうないかも……?
- 佐藤
最初に言った“ひんがしの国”編がありますよ。先日、自分のパソコンに入っている日の目を見ないフォルダを眺めていたら“ひんがしの国”編のプロットが出てきました。
おお!?
- 佐藤
だから、“ひんがしの国”編はできますよ。すごく長いですけど(笑)。
- 藤戸
制作にどれだけの期間と人数が必要になるのか……(笑)。
- 佐藤
カットシーンを作るために齋藤さんに戻って来てもらわないと(笑)。
……という夢も見ながら(笑)。それでは最後に、ご自身のゲーム開発者としてのキャリアの中で『FFXI』がどのような存在になっているか、齋藤さんと佐藤さんそれぞれお聞かせください。
- 齋藤
『FFXI』には十数年携わっていたので、“自分の体の半身”くらいにはなっていますね。スクウェア(当時)に入ってからの半分以上は『FFXI』でしたから。またオンラインゲームということで、遊んでくださっているいろいろな方からの感想をリアルタイムで聞くことができ、スタンドアローンのゲームでは味わえない体験もできました。それはすごくよかったですね。
- 佐藤
自分は『FFXI』でテキストをけっこう書いていますが、“何かを書く、物語を作る”というのは自問自答の作業です。自分自身を知って、自分の正義の面や悪の面を出してキャラクターを作っていきます。それに対してスタッフやプレイヤーの皆さんからさまざまな反応をもらったことで、まさに“『FFXI』に成長させていただいた”という感じがしますね。当時はずっと突っ走っていただけなので、本当に“いま思うと”という感じではありますが。長いけれど、あっという間の年月でした。もはや人生ですね。