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プロデューサーセッション -WE DISCUSS VANA’ DIEL-
Season2 第6回
『アルタナの神兵』加藤美穂子&高橋久美子&石川仁寿

『ファイナルファンタジーXI』(以下、『FFXI』)とゆかりのある人物をゲストに迎え、プロデューサーと対談を行うスペシャル企画“プロデューサーセッション -WE DISCUSS VANA’DIEL-”。 そのSeason2では、藤戸プロデューサーと『FFXI』中期~後期の開発スタッフとの対談により、各拡張データディスクや追加シナリオの制作エピソードをうかがっていく。

第6回のテーマは、拡張データディスク第4弾『アルタナの神兵』の物語。プロデューサーセッションSeason2 第4回(『アトルガンの秘宝』編)から引き続き、加藤美穂子さん、高橋久美子さん、石川仁寿さんに、ストーリーやイベント開発時のエピソードを語っていただいた。

『アルタナの神兵』とは

2007年11月22日にリリースされた『FFXI』の拡張データディスク第4弾。物語の舞台は、ストーリー上の現在(天晶暦884年)からさかのぼること20年前、水晶大戦(クリスタル戦争)中のヴァナ・ディール。冒険者は、禁断の口に吸い込まれた先で出会ったケット・シーから依頼され、現代と過去を行き来しながら“白き未来”を守るために奔走する。物語のヒロインであるリリゼットは、冒険者と同様に現代と過去を行き来できる力を持っているほか、過去の世界においてはマヤコフ舞踏団のトップスターとして活躍している。また、新たな主要NPCとして、マヤコフ舞踏団の団長マヤコフや団員のポーシャ、サンドリアの鉄鷹騎士隊の隊長ラジュリーズなどが登場した。

『アルタナの神兵』の物語はミッションだけでなく、過去世界の3国の連続クエストとしても展開。こちらでは、少年時代のエグセニミルやラーアル、アジドマルジド、若かりしころのザイドやフォルカー、『FFXI』に唯一登場する男性のミスラであるレコ・ハボッカ、黒い包帯で顔を覆うウィンダス大魔元帥のロベルアクベルなど、多くのNPCが物語に関わることとなる。

過去世界で訪れるエリアは、“現在の街やフィールドの20年前”となる南サンドリア〔S〕やバタリア丘陵〔S〕などが中心だが、ブンカール浦〔S〕、グロウベルグ〔S〕、カルゴナルゴ砦〔S〕といった、現代にはないエリアも追加されている(〔S〕は“影の統治”を意味するShadowreignの頭文字)。

バトル面では、新たなエキストラジョブとして踊り子と学者の2ジョブが追加。『アルタナの神兵』で核となっていたのは、過去世界での戦線におけるバトルや、それを支援するための作戦といった、さまざまな要素を含む複合コンテンツ・カンパニエ。各地で獣人血盟軍とアルタナ連合軍の大規模な攻防が行われるカンパニエバトルや、戦争にまつわる小規模な作戦を行うカンパニエopsなどがその中で展開した。

ほかには、目的や好みに応じたカスタマイズが可能なダンジョン・モブリンズメイズモンガー、多数の冒険者でバトルフィールド内のNMの討伐を目指すウォークオブエコーズなどが追加。また、誰かひとりのレベルを基準に、パーティメンバー全員のレベルを揃えられるレベルシンクの機能も、このころに導入された。

加藤美穂子

スクウェア・エニックス4期研修生として入社。『FFXI』チームに配属され、フェローシップクエストのシナリオなどを担当。『アトルガンの秘宝』、『アルタナの神兵』ではメインストーリーなどを手掛ける。

高橋久美子

5期研修生として『FFXI』チームに配属となった後『キングダム ハーツII』の開発に携わる。その後、『アトルガンの秘宝』で再び『FFXI』チームに合流し、『アルタナの神兵』ではメインライターを務める。過去ウィンダスの連続クエストなども担当。

石川仁寿

3期研修生として『プロマシアの呪縛』から『FFXI』チームに配属となり、おもにシステム面を担当。『アルタナの神兵』では過去クエストやNPCの設定などを手掛ける。現在は『FFXIV』のバトルコンテンツデザイナーを務めている。

“必殺技なし”で作る必要があった『アルタナの神兵』の物語

  • 『アトルガンの秘宝』が発売されたのが2006年、『アルタナの神兵』が発売されたのが2007年ですから、それぞれの開発作業がかなりかぶっていたのではないかと思います。実際に『アルタナの神兵』の企画が立ち上がったのはいつごろだったのでしょうか?

  • 藤戸

    はっきりとは記憶していないのですが、確か小川さん(小川公一氏。『アトルガンの秘宝』、『アルタナの神兵』でディレクターを担当)が早い段階から企画書を作っていたのは覚えています。

  • 高橋

    自分たちに話が来たのは、『アトルガンの秘宝』のシナリオが完成して、あとはゲームに載せていくだけという段階だったかもしれません。『アトルガンの秘宝』の作業をしつつ、「つぎの拡張版はこんな感じで始めるから、アイデアを用意しておいてね」と言われたのを覚えています。

  • 『アルタナの神兵』の物語の核となる“黒き未来と白き未来”という設定は、最初のアイデア段階からあったのでしょうか。

  • 高橋

    それはまだ決まってはいなかったですね。最初から決まっていたのは、“メインのミッションと、過去3国の連続クエストを作る”ということでした。前回(Season2 第4回参照)、「『アトルガンの秘宝』の物語は長編にするつもりはなかった」という話がありましたが、じつは『アルタナの神兵』の物語も、最初は短めにする予定だったんです。

  • そうだったのですか?

  • 高橋

    『アルタナの神兵』の舞台は、一部を除いてオリジナルエリア(クォン大陸とミンダルシア大陸)の過去になります。ですから、メインミッションも“3国から出発して各国のミッションを進行しつつ、ドラゴン戦や闇の王戦で合流する”というような、最初の3国ミッションを踏襲した作りとボリューム感にしようと決めていました。

  • なるほど。メインミッションと過去3国の連続クエストを並行して進めるという流れは、その時点で決まっていたのですね。

  • 高橋

    はい。そこで過去3国それぞれに担当がついて、私がウィンダス、京屋さん(京屋陽子氏。元プランナー)がバストゥーク、鈴木くん(鈴木将敏氏。元プランナー)がサンドリア担当と決まって、ドラゴン戦や闇の王戦にあたる部分を加藤さんが担当するという形で進んでいきました。その後、加藤さんが最初の1回目を書いた後に退社されてしまったので、私が後を引き継いでメインミッションを書く形になったわけです。その時点では、先の話はまだ決まっていませんでしたね

  • そして最終的には、『アルタナの神兵』も長編になってしまったと(笑)。お話を考えていくうえで、“過去を描く”という点に関して苦労した部分はありますか?

  • 加藤

    過去を描くということが決まったときに問題になったのが、“現在に影響を与えるか、与えないか”という話でした。最初に研修生が作ったクエストが組み上がったのですが、それが現在に影響を与える内容だったんですよ。それを見た河本さん(河本信昭氏。『プロマシアの呪縛』でディレクターを担当)が心配して走ってきて、「現在に影響を与えるのはたいへんだよ?」と言っていたのは覚えています。

  • ゲームに実装されているすべての物語と矛盾が起きないようにしなければいけませんし、“プレイヤーによって現在の状況が変わる”ということも発生してしまいますからね。

  • 加藤

    ですから、そのクエストが『アルタナの神兵』の方向(現在のヴァナ・ディールには影響を与えないという方向)を決定づけました。

  • 高橋

    でも、タイムトラベルものなのに“何をしても変わらない”というのもおもしろくないというか、過去に行く甲斐がないですから、その点は悩みました。また、タイムトラベルに関する“SFものの決まりごと”がとにかくたいへんで……。「ハードSF的にはこう捉える」とか、「時間移動には解釈が何通りもある」とか、難しいな、と……(苦笑)。

  • 石川

    “コペンハーゲン解釈(※)”も問題になりましたね。

    ※量子力学に関する考え方のひとつ。未来のことを正確に特定することは原理的に不可能であり、未来の結果は確率的にしか予測できないということを示す。
  • 高橋

    本来、映画の『バック・トゥ・ザ・フューチャー』みたいに、過去に戻って行動したことによって現在が変わるという“バタフライエフェクト(※)”的なところが、いわゆるタイムトラベルもののおもしろさです。ところが、不特定多数のプレイヤーで世界を共有している『FFXI』では現在のフィールドを変えるわけにもいかないので、それが封じられているんです。いわば“必殺技なしで戦わなくてはいけない状態”から物語を考える必要があったので、ストーリー作りには非常に難儀しました。

    ※過去の小さな事象が時間の経過とともに大きな事象の引き金となり、未来が変化すること。

  • その縛りの中で、プレイヤーにとっての“現在”であるクリスタル戦争に勝った世界=白き未来と、クリスタル戦争に負けた世界=黒き未来が生まれたのですね。

  • 高橋

    あとは、過去の話を作るにあたって“クリスタル戦争の時代を舞台にすること”と、“人間と獣人が戦う話を描く”ということは決まっていましたから、それをどうアレンジするかを考えて話を作っていきました。ちなみに、お話の主軸はクリスタル戦争ですから、本来は闇の王と戦う展開にするのがセオリーなんです。でも、それについてはバトルチームから「闇の王とのバトルについては何度も挑戦できるコンテンツ(無影大王討伐)を入れる予定」と聞き、ストーリーには組み込まない形になりました。

ついに明かされた“ともよ”の真実!

  • そうやって物語が作られていく中で、ヒロインであるリリゼットも生まれていったと思いますが、その誕生経緯を教えてください。

  • 高橋

    当初は“ケット・シーを狂言回し(語り手)にしてお話を引っ張っていく”予定だったので、シナリオの初期段階では3国の登場人物のほかはケット・シーしか出てきませんでした。でも「やっぱりヒロインは欲しいよね」という話になり、追加ジョブのひとつが踊り子だったので「踊り子の女の子をヒロインにして、舞踏団みたいなところから話を始めるというのはどう?」という流れが決まっていったと思います。

  • リリゼットは表情がかなり豊かなヒロインになりましたね。

  • 高橋

    そうですね。いっぱい“ボーン”(※)を入れてくれて、表情も動かしてもらいましたね。モーション班の皆さんがメチャメチャがんばってくれました。

    ※3Dモデルを変形、アニメーションさせるために必要な、人体の骨(ボーン)のようなパーツ。
  • 石川

    ちなみに『アルタナの神兵』の物語は、過去3国それぞれの連続クエストがあるため、初期段階から群像劇にする予定でした。ですから “各国にそれぞれふたりのオリジナルNPCを作る”というコストが最初から割り当てられていたと思います。

  • 高橋

    具体的には、サンドリアですと少年騎士団のふたり(団長のエグセニミルと副団長のラーアル)、ウィンダスですと元帥(ロベルアクベル)とレコ・ハボッカになります。なお、当初バストゥークにも双子のNPCが予定されていたのですが、こちらはボツになりました。かわりにクララの顔が専用のものになっています。

  • 石川

    そうそう。確か、その余ったキャラクター枠を使おうとしたのが“ともよ”だったよね。

  • その“ともよ”の経緯についてお聞きしたいです。

  • 石川

    バストゥークは、当初予定していた専用NPCがいなくなりましたが、使わずにいた開発コストがもったいないと思ったんですよ。それで、「そのぶん規模が大きめのサブクエストを作りたい」という相談を加藤さんにして、ハイドラ戦隊長の話のプロットを書きました。そのとき「隊長はどんなキャラクターなの?」という話題から、「『カードキャプターさくら』(※)の“大道寺知世”みたいな見た目」という話になり“ともよ”という開発名が生まれたのです。けっきょくそのサブクエストは実装されませんでしたが、それ以降、余っているキャラクター枠のこと自体を“ともよ枠”、“ともよ”と呼ぶようになりました。

    ※1996年に連載が開始したCLAMP作の少女漫画。のちにテレビアニメ、劇場アニメも公開され人気を博した。
  • そんな経緯があったとは(笑)。“ともよ”の真実がついに明らかになりました。当初はリリゼットと直接関係しているキャラクターではなかったのですね(※)。

    ※2008年のイベント“ヴァナ★フェス2008 in 後楽園”のトークセッションにて、リリゼットのデータが入っているフォルダの名前、および初期の性格付けの参考にしたキャラクターの名前が“ともよ”であることが公開され、それ以降リリゼット自体が“ともよ”の愛称で呼ばれることもあった。
  • 石川

    じつは“ともよ”が生まれた経緯としては関係がなかったんですよね。ちゃんと説明できる機会がもらえてよかったです(笑)。

  • ほかに『アルタナの神兵』の作業で印象に残っていることはありますか?

  • 石川

    細かい部分では、アレヴァトがヨロイ蟲を食べる設定を作ったのは自分です。

  • 高橋

    アレヴァトの顔、いいですよね。私、好きでした。

  • 石川

    “カンパニエバトルで龍になる女の子のNPCを参戦させる”という設定は決まっていたんですよ。そこで、自分がフェローの性格付けをした後だったこともあり、アレヴァトのキャラクター性を深めていくうえで「どうやって作ったらいいですか?」という相談を受け、提案しました。

過去ウィンダスの名シーンが生み出された経緯

  • つぎに過去3国のクエストの中でも、とくに過去ウィンダスの連続クエストにフォーカスして高橋さんにうかがいたいと思います。ウィンダスは現代にも特徴的なNPCがたくさんおり、さらに元帥やレコといった新しいNPCも登場するわけですが、こういったNPCを使ってどのような物語を描こうと考えられたのでしょうか?

  • 高橋

    ウィンダスのミッションやクエストにはこれまでにも設定がいっぱい盛り込まれていて、「この時期にこれがあって、光の弓や完全召喚があって……」というようにネタになるものがたくさんあったので、「それらを順番に取り入れていこう」というところから始まりました。

  • 史実として伝えられているものを、実際の物語の中に組み込んでいった感じですね。

  • 高橋

    そうですね。過去の話ですから、これから起こることは決まっています。とくに世界設定が好きなプレイヤーの方々は“何が起こるのか”をご存じなので、そこにどういう不確定要素を入れたらおもしろいか、「じつはこうだったんだ」と驚いてもらえるか、といったことを考えました。そこで、ミステリー作品における“倒叙もの”のように、“結末はわかっているけれど、過程を楽しんでもらう”ための要素として、元帥とレコという不穏なNPCを入れようと考えた記憶があります。

  • 加藤

    高橋さんが元帥を作っているとき、私はまだ会社にいましたが「すぐ首切る! 元帥怖い!」と思っていました(笑)。

  • 顔に黒い包帯を巻いていて見た目も怖いですし……。

  • 高橋

    当初、元帥は“悪魔とのハイブリッド”のような設定でした。その後、ストーリーの流れが決まっていく中でその設定はなくなりましたが、メインストーリーとも関連性を持たせようと考えて冥護四衆(みょうごししゅ)のひとりとしての設定を入れ込みました。

  • 過去ウィンダスの物語の中でも、カラハバルハの完全召喚は『FFXI』でも屈指の名シーンだと思います。このエピソードはどのように作られたのですか?

  • 高橋

    じつは、カラハバルハが召喚を行うシーンは『アルタナの神兵』のPV(2007年の東京ゲームショウで公開されたトレーラー)にも登場するのですが、その時点ではまだ具体的なエピソードは完成しておらず、“これから作ろうと思っているイメージをそれっぽいカットにして、そこにひと言コピー(セリフ)を入れる”という形で制作されたものでした。ですから、星の神子の「お願い、カラハバルハ・・・。」というキャッチコピーを入れたものの、まだ深くは考えていなかったんです。

  • あれはすごくワクワクするPVでした。

  • 高橋

    それを「すごくよかった」と相場さん(相場良祐氏。元アートディレクター)に褒められたので、「なんで?」と聞いたら、「(フェンリルを召喚するとカラハバルハが)死ぬとわかっているけど、このままだと“もう絶対勝てない”ということをみんなが思い知ってしまった。そのうえで、愛する人にそれを頼まなくてはいけないというのが“ドラマ”じゃん」と言われて、「なるほど、それだ……!」と。

  • 加藤

    いただきます、と(笑)。

  • 高橋

    それを軸にお話を組み立てようと思い、具体的なエピソードを構成していった感じです。ゲームに落とし込む際はとてもきれいに演出を付けてもらって、完成したシーンを見て「すごい!」とびっくりしました。あれは、いっしょに作ってくれたメンバーそれぞれの力の結集だと思います。

  • 『アルタナの神兵』のメインストーリーは完結までにおよそ3年かかりました。これは計画的なものだったのでしょうか。

  • 高橋

    かなり早い段階でミッションとクエストを交互に実装していくことが確定したため、「このままいくと、完結はこのぐらいの時期になるよね」というのは決まっていた気がします。

  • 藤戸

    ただ、最初から3年かけるつもりはなかったと思います。『アトルガンの秘宝』では制作が進むにつれてだんだんリッチになっていったという話がありましたが、『アルタナの神兵』でも3国ぶんの中身を揃えて作るのがたいへんになっていき、当初の予定よりも実装に必要なパワーが徐々に大きくなっていって……。

  • 結果的に物語も大ボリュームとなりました。

  • 藤戸

    そんな中でも、シナリオチームはロードマップを作って「ここまでにこれを作ってリリースしよう」というスケジュールをこなし、計画通りに進行できたかと思います。

  • ストーリーの結末についてもうかがいます。エンディングは100%のハッピーエンドではなく、リリゼットにとってはかなり過酷な結末とも言えます。これについてはいかがですか?

  • 高橋

    私はあまりキツイ終わりかたとは思っていませんでした。これまでの拡張のストーリーは、“みんなでがんばって強大な敵を倒す”という作りになっています。でも、『アルタナの神兵』は最終的に“人と人との戦い”ですから、“レディ・リリスを倒してハッピーエンド”というのは違う気がしたのです。

  • 思いと思いのぶつかり合いですものね。

  • 高橋

    さらに、レディ・リリスがリリゼット自身であるということを考えると、「やっぱり、これまでのストーリーとは違った方向の結末がいるんじゃないかな?」と考えて、チームのみんなとも相談して、いろいろなパターンを考えました。その中から現在のエンディングに決定した形になります。

数々の職人たちの才能によって生まれた『FFXI』の厚み

  • 加藤さんは『アルタナの神兵』の途中で退社されたとのことですが、どのくらいの時期まで開発に関わっていたのでしょうか?

  • 加藤

    『アルタナの神兵』の最初のバージョンアップまでは関わっています。当時は『アトルガンの秘宝』のときに私が多くの業務を抱え込んだこともあり、『アルタナの神兵』では「みんなで負荷を分散させよう」ということで、3国のクエストを手分けして担当することになりました。その中で私の担当はメインストーリーでしたが、全体のチェックに加えて、3国のクエストとの整合性も考える必要があり、スケジュール感的には以前とあんまり変わらなかったですね(苦笑)。

  • その後、チームを離れた後に『アルタナの神兵』のストーリーの続きをご覧になったかと思いますが、その感想をお聞かせください。

  • 加藤

    どんどんリッチになっていて、「これを作るのはすごくたいへんそうだな……」と感じました。あと、私がいたときはケット・シーが1体だったのですが、「数が増えている!」と驚きました(笑)。

  • 高橋

    みんな同じ顔だから「いっぱいいたらおもしろいんじゃない?」というノリで増えました(笑)。

  • 加藤

    かわいいし、ね(笑)。

  • 石川さんはその後『FFXIV』の開発に異動されますが、どの時期まで『FFXI』に関わっていたのでしょうか?

  • 石川

    『アルタナの神兵』の最後の作業までいたかと思います。関わった仕事で印象に残っているのは、黒魔法“リトレース”の取得クエストを作ったことですね。あとは設定面のチェックなど、細々とした仕事をしていた気がします。ほかには追加シナリオの『戦慄! モグ祭りの夜』にも、少しだけ関わっていました。

  • 藤戸

    自分も『戦慄! モグ祭りの夜』では、チョコボ掘りの部分を頼まれて作っていた気がします。このころは並行していろいろな部分で動いていました。

  • ほかにも当時の藤戸さんは、どのような部分を担当されていたのでしょうか。

  • 藤戸

    ストーリー関連ではなく、システムまわりのことを担当していたと思います。あとはチームの運営的な面で、誰かの作業が遅れていてボトルネックになっているところがあれば、それを正すために話し合いをするとか、そういう仕事をしていました。

  • 『アルタナの神兵』の時期は、レベルシンク(※1)やフィールド・オブ・ヴァラー(※2)といった、システム面の新要素も実装されましたね。

    ※1 パーティメンバー全員のレベルを任意のプレイヤーキャラのレベルに合わせるシステム。 ※2 フィールドで指定された各種訓練を遂行することで、経験値とギル、タブが入手できるコンテンツ。なお、ダンジョン内で行う同様のコンテンツとして、グラウンド・オブ・ヴァラーもある。
  • 藤戸

    そのころの自分は『EverQuest(エバークエスト)2』(以下、『EQ2』。※)の研究もしていたのですが、ゲーム中に“キャラクターのレベルを合わせる”という仕組みがあったんです。そこで、従来より問題になりがちだった“レベル差のためにパーティを組みにくい問題”の対策として「『FFXI』でも似たようなことができませんか」と松井さん(松井聡彦氏。『FFXI』4代目ディレクター/2代目プロデューサー。当時はバトルディレクター)と権代さん(権代光俊氏。『FFXI』元バトルプランナー)に相談して、権代さんにメインで設計してもらったのがレベルシンクになります。

    ※2004年に北米・欧州でサービスが開始されたMMO(多人数同時参加型オンライン)RPG。前作の500年後が舞台となっている。
  • カンパニエやカンパニエopsもそうですが、当時はレベル上げのスタイルがだんだんと変わってきたころでしたね。選択肢が増えたと言いますか。

  • 藤戸

    新しい成長要素や、育成をフォローできる仕組みがあったほうがいいだろうと考え、当時はいろいろと提案していきました。

  • トレジャーキャスケット(※)の実装もこの時期でした。

    ※モンスターを倒した際、まれに出現する宝箱。茶色い箱には装備品、青い箱にはテンポラリアイテムが入っている。なお、茶色い箱には鍵がかかっており、ヒントをもとに2ケタの数字を入力して開錠する。
  • 藤戸

    トレジャーキャスケットも『EQ2』を参考にしています。モンスターを倒すと宝箱が出て、それを開けるというだけでも「何が入っているのかな?」というドキドキ感がありますし、さらにレアリティがあったらもっとおもしろいだろうと思って提案しました。加えて、装備はお店で買うと高いですし、競売などにもあまり供給されていないものもありましたので、そこをなんとかしようと思って“茶色い宝箱を開けると装備が手に入る”ようにしています。不要な装備でも売ればギルになりますし、テンポラリアイテムもうまく使えばレベル上げの手助けになります。そういったことを考えて進められた企画でした。

  • 石川

    宝箱を開けるために2ケタの数字を当てるやつは好きでした(笑)。

  • 最後に、皆さんのキャリアにおいて『FFXI』がどのような作品だったか、改めてお聞かせください。

  • 加藤

    『FFXI』の仕事は初めての社会人経験で、本当に何もわからないところから始めたので、最初は“自分がこんなにわかってない”ということすらわかっていなかったのです。でも、まわりの人たちからゲームについて学ぶことで、“自分がおもしろいと思うものをお客様に届ける”ことができました。「たくさんの経験をさせていただいて、ありがとうございます!」というのが『FFXI』への想いです。あとは、こんなに時間が経ってから、このような話ができる機会をいただいたことに驚きました(笑)。

  • 高橋

    私も当時はこんなに長く続いていくタイトルになるとは思わなかったですし、いまになって話をすることになるとも想像もしていなかったので、本当にありがたいなという気持ちでいっぱいです。いまでも『FFXI』を好きでいてくださり、熱心に遊んでくださるプレイヤーさんがたくさんいらっしゃるのは本当にうれしいです。開発冥利に尽きると、感謝しています。私自身も、おばあちゃんになってもプレイしたいと思っているので、これから30年、40年と続いてほしいですね。続けてください!

  • 石川

    自分も『FFXI』が社会人初の仕事でしたので、本当にいろいろな経験を積ませていただきました。“リアルタイムにフィードバックをいただきながら、自分といっしょにプレイする人のためのものが作れる”ことのすばらしさを実感でき、とてもいい仕事をさせていただいたと、いまでも思っています。『FFXI』は本当にいいゲームです。ビジネス的にもできるだけ長く続いてほしいと思っています。

  • 藤戸

    ここにいる3人は“『FFXI』が長く続く理由”を作ってくれた人たちです。「『FFXI』には厚みがある」という評価を聞くことがあります。それは拡張版をつなぎ、ここまで積み上げてきたゲームだからこそ、他の追随を許さない内容の濃さやボリューム感になったわけですが、作っている人たちが“それを作り上げるだけの才能”を発揮しないと、この宝石が生まれることはなかったわけです。本当にすごい職人たちです。そんな皆さんやたくさんの人々が働いてきたおかげで現在があります。本当にありがとうございます。

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