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『グランブルーファンタジー』×『ファイナルファンタジーXI』コラボ記念
サイゲームス 木村唯人プロデューサーインタビュー 前編

今年2022年3月で8周年を迎えたRPG『グランブルーファンタジー』(以下、『グラブル』)にて、いよいよ本日5月9日に『ファイナルファンタジーXI』(以下、『FFXI』)とのコラボが配信される。それに合わせ、今回のコラボの生みの親であり、『FFXI』を愛するプレイヤーでもある『グラブル』のプロデューサー・木村唯人さんへのインタビューを、前編・後編の2回にわたってお届け。まずは20周年という節目を迎える『FFXI』との記念すべきコラボについてお話しいただいた。

『グランブルーファンタジー』公式サイト

木村唯人

サイゲームス専務取締役。2011年に代表・渡邊耕一氏とともにサイゲームスを設立。『神撃のバハムート』、『グランブルーファンタジー』、『シャドウバース』、『プリンセスコネクト!Re:Dive』など多数の作品のプロデューサーを務める。

“いまの『FFXI』の魅力”を伝えるコラボにしたい

  • まずは、今回『グラブル』と『FFXI』のコラボが実現に至ったきっかけと経緯を教えていただけますか?

  • 木村

    2020年の秋ぐらいに、こちらからスクウェア・エニックスさんへ「『FFXI』が再来年20周年になるのでコラボできませんか?」とお声がけさせていただいたのがきっかけになります。20周年というのはすごいことですし、コラボはタイミングが大切ですから、「それに合わせてぜひ」とお願いしてみました。

  • 企画は木村さんの発案だったのでしょうか?

  • 木村

    そうです。僕自身『FFXI』が好きだというのもあり、『FFXI』の20周年に対してこちらからもいろいろ盛り上げることができればと考えました。また、『グラブル』と『FFXI』は同じファンタジーRPGで似た部分がありますし、プロデューサーとしてシナジーが十分あると考えた結果になります。

  • 確かに『グラブル』プレイヤーの中には『FFXI』のプレイ経験者がかなりいらっしゃいますね。

  • 木村

    僕ももちろんそうですし、開発メンバーも『FFXI』を遊んでいた人は多いですね。

  • コラボのお話は、トントン拍子で決まりましたか?

  • 木村

    はい。前向きに検討していただいて、すぐ「やりましょう」という形になっていきました。

  • 『グラブル』はいろいろな作品とコラボされて、どれもものすごく高いクオリティで各作品が再現されていますが、今回『FFXI』を再現するうえでは、なにを大事にしたほうがいいと思われましたか?

  • 木村

    “再現度を高める”というのは『グラブル』のコラボでは一番基本的なことだと思っています。そのうえで、“『FFXI』の魅力を深いところまで知ってもらえる”ようなコラボにしたいと考えました。

  • それは『FFXI』をプレイしている人や、かつてプレイしていた人に加えて、まだ『FFXI』を知らない人にも魅力が伝わるように、ということですか?

  • 木村

    はい。かつてプレイしていた人も、『FFXI』を知らない人にも、いまの『FFXI』の魅力を伝えたいという思いがあります。『FFXI』には20年という長い歴史があり、その中でも最初の時期のほうがプレイしている人が多いと思いますが、そういった人たちに現在の『FFXI』の魅力を伝えられるようなコラボにしたい、と考えていました。

  • 『ヴァナ・ディールの星唄』(以下、『星唄』)の後のストーリーという設定にしたのも、その狙いが大きいのでしょうか。

  • 木村

    それが一番大きいです。『星唄』もすでに7年前(2015年)に実装された物語ですが、『FFXI』の集大成と呼べるシナリオであり、そこで一度物語が完結した形になっているので、そこまでは皆さんに知ってほしいという気持ちがあります。そのために、物語の時間軸を『星唄』の後に設定させてもらいました。さらに、いまは新しい展開として『蝕世のエンブリオ』という物語があるということも、お伝えできるといいなと思います。

  • 懐古ではなく、2022年の『FFXI』の魅力を伝えたい、という思いをすごく感じます。

  • 木村

    ただ懐かしいというだけではなく、その先にさらに新しいキャラクターや新たな冒険が待っているということを、途中で離れてしまった人たちにも伝えたいと思い、コラボのシナリオもそういう方向性にしていますね。

  • ちなみに、『グラブル』のイベントシーンではボイスが流れますが、今回は「『FFXI』らしさの再現」ということで、ボイスなしのモードもあるとうかがいました。

  • 木村

    これは声優の方々には申し訳ないのですが、『FFXI』はスピンアウト的なコンテンツではボイスがついているものの、ゲーム自体にはボイスはありません。できるだけ当時のイメージそのままで遊んでいただきたいので、ボイスがないモードも選択できるようにしました。やはり、ずっとプレイしている中でキャラごとの声のイメージがある方もいると思いますので、そのイメージで遊びたい人はボイスなしで。そうではない方々はぜひボイスありで遊んでいただきたいと思います。

  • このモードを知った時、相当なこだわりだと思いました。

  • 木村

    これは僕が無理を言って入れてもらいました(笑)。できるだけ『FFXI』をプレイしている感じを再現したかったのです。合わせて、ボタンを押すときの“シュッ”という音も再現しました。あれがないと、ボイスなしモードの意味がありませんから。さらにUIとフォントも『FFXI』に似たものにしており、ちょっと普通のコラボとは違う形になっています。

  • 先ほど、スタッフの中にも『FFXI』のプレイヤーがいるとおっしゃっていましたが、皆さんでそういったこだわりの要素を入れ込んでいたったのでしょうか。

  • 木村

    すごく『FFXI』に詳しいスタッフがいて、その人たちと一緒に作りました。僕より詳しい人が何人もいます(笑)。

心残りだったアビセアでのプリッシュの境涯

  • 今回プレイアブルキャラクターとしてプリッシュとイロハとリリゼットが登場しますが、この3人を選ばれた理由は?

  • 木村

    自分は追加シナリオを含めてミッションを全部クリアしているのですが、その中でアビセアのプリッシュだけ、あのまま天象の鎖に残されているのがずっと心残りでした。リリゼットは離れ離れになるとしても「お互い別々の未来でがんばろうね」と前向きですし、ライオンも一度は消滅してしまいますが、とあるタイミングでちゃんと帰還します。しかし、アビセアのプリッシュだけは帰って来ないんですよね……。たまに天象の鎖のバトルフィールドに遊びに行くと、ずっとプリッシュがいて、見るたびに思い出してしまう。そこで今回、多くの冒険者にとっても心残りかもしれないということで、アビセアのプリッシュがメインの話になっています。

  • 木村

    イロハは『星唄』のメインヒロインであり、ぜひ『星唄』を皆さんに知ってほしいので登場しています。ほかにメインヒロインで誰を出そうかと迷ったのですが、異世界から飛んでくるという部分がリリゼットに合っているので、もうひとりに選ばれました。アフマウはお姫様なのでそう簡単には出て来れないでしょうし。あと、アトルガンにいるアフマウと比べてリリゼットはなかなか会えないので、コラボでぜひこちらに飛んできてほしいなと思ったんです。『FFXI』での冒険者(プレイヤーキャラクター)こそ出て来ませんが、“異世界タッグ再結成!”みたいなことができたらなと。

  • 人気が高いシャントットなどが候補になるかと思いましたが、いまの『FFXI』を表現した物語に即した形で選ばれているのですね。

  • 木村

    もう少し枠があれば、シャントットもプレイアブルキャラクターとして出したかったのですが、今回はこの3人のヒロインにフォーカスさせていただいています。

  • ほかにも企画段階で入れたかったキャラクターやアイデアはありましたか?

  • 木村

    自由にやらせていただいたので、“やりたかったけどできなかった”ことはあまりないですね。『FFXI』は世界観がすごくしっかりしていて矛盾のあることはできないのですが、その世界観を守りつつ、自由にやらせていただきました。キャラクターについては、あまり登場人物が多すぎるとまとまりがなくなってしまいますので、一定の人数にしてあります。

  • 『星唄』に絡めた物語となると、登場するキャラクターの数もかなり多くなってしまいますしね。

  • 木村

    『星唄』自体、『FFXI』の集大成的な物語ですからね。

  • キャラクターといえば、最初にプレイヤーの分身である冒険者の種族を選べるとのことですが、こちらを設定した意図や苦労した点はありますか?

  • 木村

    『グラブル』のコラボイベントでは、普通はコラボ作品の主人公が登場します。しかし『FFXI』の場合、主人公=プレイヤーの分身でもあるので、種族やフェイスタイプなどが違うとプレイした人にとっては「これではない」となってしまいます。とはいえ、やはり『FFXI』での自キャラがコラボ内で活躍する姿は見たいと思うので、今回は『星唄』のストーリーの中で神になった冒険者が、シルエットで助けてくれるようにしました。制作時の苦労は種族が多いことですね(笑)。

  • どのようなイベントシーンになるか楽しみです。ガルカとタルタルでは、かなり印象も違って見えそうですね。

  • 木村

    個人的にはタルタルが一番いいですね(笑)。黒帯クエストの武神様のような“達人感”がすごいので。

  • イベント限定の召喚石や武器はどのようなものになりますか?

  • 木村

    召喚石はシャントットの自動人形で、武器はクラーケンクラブです。

  • すごい武器が出るのですね(笑)。『FFXI』では持っていなくて『グラブル』で初めて手に入れるという人もいそうです。

  • 木村

    絶対に欲しいですよね。エクスカリバーなどは同名の武器が『グラブル』にすでにあるので、“登場していないものの中でインパクトのあるもの”としてクラーケンクラブが選ばれています。

  • クラーケンクラブはどんなジョブでプレイしていた人でも、何かしら印象に残っている武器でしょうしね。

  • 木村

    ほかにもリディルなど、皆さんの思い入れのある武器があると思いますが、『FFXI』を代表する武器として採用しました。

自分がすごく好きな作品だからこそ、できることはすべてやった

  • このインタビューの公開当日から、いよいよコラボがスタートしますが、改めてコラボを手掛けた感想をお聞かせください。

  • 木村

    自分がすごく好きな作品だからこそ、やれるだけはやりました。もちろんプレイヤーそれぞれの『FFXI』のイメージがありますから、皆さんによかったと言ってもらえるかは不安ですし、『FFXI』の膨大な魅力の全部を入れられたわけではありません。でも、その中で最大限『グラブル』とのコラボとしてできることは、すべてやったと思います。

  • 『FFXI』のプレイヤーの中には、今回のコラボをきっかけに『グラブル』を始める方もいるでしょうし、逆に『グラブル』のプレイヤーで初めて『FFXI』の世界観に触れる方もいると思います。それらの方々に、今回のコラボのどの部分に注目し、どのように楽しんでもらいたいと考えていますか?

  • 木村

    『FFXI』を楽しんでいるプレイヤーが楽しめるように作ってありますので、まずはそれを楽しんでほしいですね。シナリオもそうですし、正式な続きではありませんが『FFXI』のメインのストーリーに関わってくるようなお話が読めるというのは、大きいかと思います。また、『FFXI』を遊んでいて『グラブル』も遊んでいるという人にとっては、メインヒロインをパーティに組み込めるというのはうれしいことではないかなと思います。3人もいますし、オールスター的なパーティが組めます。また、いろいろなキャラクターどうしの掛け合いとか、あのキャラクターに似ている人が出ている、といったネタが入っていたりします。各キャラクターの物語が描かれている“フェイトエピソード”もあるので、それもぜひ読んでいただきたいですね。対象はメインヒロインの3人だけですが、個人に焦点を当てた長めのストーリーは『FFXI』にはあまりないので、その部分も楽しんでいただきたいと思います。

  • 『FFXI』は20年の歴史があり、いろいろな時期に遊んでいたプレイヤーがいらっしゃると思いますが、そこはまんべんなくプレイしていただきたいという感じですか?

  • 木村

    いま現役で『FFXI』を遊んでいる方はすべて楽しめると思いますし、プリッシュは20年の中でも前半のほうのメインヒロインなので、そのころにプレイされていた方も「『プロマシアの呪縛』の後に、まだ壮大な冒険があるのか」というのがわかる形になっています。先に登場するキャラクターや先のストーリーの存在を知って、また『FFXI』に興味を持ってもらえれば思います。

  • 逆に『グラブル』のプレイヤーに注目してほしいのは、どういった部分ですか?

  • 木村

    『FFXI』というゲームが20年も続いていて、王道のRPGとして存在していることを知ってもらえればうれしいです。いまも続いているということを知らない方もいるでしょうし。魅力的なキャラクターがたくさんいて、すごく壮大な話があるんだろうな、というのがわかる形になっていますので、その壮大な冒険に触れてみたいと思うきっかけになってもらえれば幸いです。キャラクターだけ見たとしても、きっとコンテンツとして興味を持ってもらえると思います。

  • 『グラブル』も今年3月に8周年を迎えました。今回のコラボだけではなく、今後の『グラブル』で注目してほしい点を教えていただけますか?

  • 木村

    今後もいろいろなコンテンツがまだまだ追加されます。6月からは全国4カ所で“グラブルEXTRAフェス”が開催されますし、ほかにもまた違った形で屋外展示イベントのようなものを実施する予定です。そういった展開はこの先の10周年に向けて計画しているので、きっと楽しんでいただけると思います。また家庭用ゲームでは『グランブルーファンタジー リリンク』も今年(2022年)発売予定ですし、『グランブルーファンタジー ヴァーサス』でeスポーツ大会も開催していきます。今回の『FFXI』とのコラボをはじめ、ますます多彩なことを楽しめるコンテンツになっていますので、ぜひご期待ください。

※インタビュー後編へ


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