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『グランブルーファンタジー』×『ファイナルファンタジーXI』コラボ記念
サイゲームス 木村唯人プロデューサーインタビュー 後編

今年2022年3月で8周年を迎えたRPG『グランブルーファンタジー』(以下、『グラブル』)にて、『ファイナルファンタジーXI』(以下、『FFXI』)とのコラボが2022年5月21日まで開催中。それを記念して、コラボの生みの親であり、『FFXI』を愛するプレイヤーでもある『グラブル』プロデューサー・木村唯人さんへのインタビューをお届けする。すでに公開中の前編ではコラボの詳細についてお話をうかがったが、この後編では、木村さんの『FFXI』のプレイ遍歴や、20周年を迎えた『FFXI』に対する想いを語っていただいた。

※このインタビューは『グラブル』×『FFXI』コラボの多少のネタバレを含みます。その点をご了承のうえお読みください。

『グランブルーファンタジー』公式サイト

木村唯人

サイゲームス専務取締役。2011年に代表・渡邊耕一氏とともにサイゲームスを設立。『神撃のバハムート』、『グランブルーファンタジー』、『シャドウバース』、『プリンセスコネクト!Re:Dive』など多数の作品のプロデューサーを務める。

『FFXI』がなければゲーム業界には入っていなかった

  • 木村さんはWindows版発売のタイミングで『FFXI』のプレイをスタートされたということですが、どのようなきっかけだったのですか?

  • 木村

    まわりの友人がPlayStation 2版発売の時点で始めていて、「すごくおもしろい!」と言っていたんです。それで、すぐプレイしたかったのですが、そのときはPlayStation BB Unitを買えなくてスタートできませんでした。その後、パソコンを買おうと思っていたこともあり、Windows版が発売されたタイミングで始めた形です。

  • プレイを開始した当時はおいくつだったのですか?

  • 木村

    『ジラートの幻影』の発売前で、Windows版が出てすぐに買って始めた覚えがあるので……たぶん2002年で大学生だったと思います。いちばん遊んではいけない時期に始めましたね(笑)。

  • 先ほどのお話からすると、周囲にもプレイしている人は多かったのですか?

  • 木村

    はい。最初にプレイしていた友人以外に、アルバイト先の人も始めていました。そのころはゲームセンターでアルバイトしていたのですが、バイト仲間のほぼ全員がプレイしていて、いっしょにやっていましたね。

  • 学生のあいだでも、その段階から『FFXI』をプレイしている方は多かったのですね。

  • 木村

    流行っていましたね。PlayStation BB Unitの入手難度的に初期からやっていた人はあまりいませんでしたが、Windows版が出てからはすごく始めやすくなっていたと思います。

  • 『FFXI』の最初の印象はどうでしたか?

  • 木村

    世界も広くて大勢の人が存在し、街を行き交う人がふつうに会話をしていたりして“ファンタジーの世界が丸ごとあって底知れないゲーム”に思えました。「この世界はいったいどこまで存在し、いったい何があるんだろう」……といったように、本当にひとつの“世界”を遊べるかのような印象を受けました。

  • 所属国はどの国から始めましたか?

  • 木村

    当時、バイト先の友だちと高校のときの友だちが、それぞれ違うワールドだったので、ふたつキャラクターを作ってバストゥークとウィンダスで始めました。いまでは考えられない遊びかたでしたね(笑)。

  • ウィンダスでも始められたということは、かなり街が広く感じられたのでは?

  • 木村

    ウィンダスは広すぎますよね(笑)。まあ、バストゥークも広いですし、サンドリアは2階建ての建物があって「NPCがいない!」と思ったら上の階にいたりなど、階層構造がすごかった印象があります。それらの広い街にたくさんの人がいて“Shout”が飛び交っていたり知らないことがたくさんあって、すごくおもしろいと感じると同時に衝撃を受けました。

  • キャラクターをふたつ作られたとのことですが、種族はそれぞれ違っていたのですか?

  • 木村

    違いました。バストゥークはガルカで、ウィンダスはタルタルで始めています。

  • 極端ですね(笑)。移動速度が違って見えませんでしたか?

  • 木村

    実際の速度は同じなのですが、ガルカはゆったり走っている気がしましたね(笑)。

  • どちらかのキャラクターが後にメインになったのですか?

  • 木村

    最初は両方ともレベル75まで育成していたのですが、最終的にはウィンダスで始めたタルタルのほうがメインになりました。

  • あの時代の『FFXI』でふたつのキャラクターをレベル75まで育てたとはすごいですね……。ちなみに、タルタルのほうのメインジョブが召喚士だとうかがいましたが、召喚士に思い入れはありますか?

  • 木村

    思い入れは強いですね。レベル60から75までパーティに2回しか誘われなかったので、ずっとリーダーをしてレベル上げをしていました。それもいい思い出です(笑)。当時はリヴァイアサンのスピニングダイブなどが強かったものの、前衛のTPが溜まる速度よりも、履行技の再使用時間が遅かったんですよね。

  • フェンリルも強くて、実装時はかなり注目を集めました。

  • 木村

    フェンリルについては、レベル65か70くらいのときに、どうしてもフェンリルと契約をしたくてリーダーをして挑んだのを覚えています。「レベルが低いですがお願いします!」と“Shout”で募集して人を集めたのですが、付き合ってくださった皆さんが快くいっしょに挑んでくださって、ありがたかったですね。自分はレベルが低かったので、フェンリルのエクリプスバイトに合わせて真空の鎧を使おうとがんばりました。当時、全員がレベル75のパーティでも負けてしまうほどの強さだったのですが、一期一会のパーティで勝てたのがすごくうれしかったです。

  • 召喚士の魅力はどこにあると思いますか?

  • 木村

    当たり前ですが、“召喚”できることです! 獣使いにも“よびだす”がありますが、モンスターではなく神秘的な召喚獣を自由に呼び出せるのがすごく魅力的でした。『FF』シリーズを通して見ても花形のジョブで召喚獣の種類もたくさんありますし、そのうえいろいろな技を使える。召喚獣の使う契約の履行のエフェクトも、ほかのジョブのアビリティとは違い“なにかスゴい技を発動する”というイメージがありました。最初はただ召喚したいという一心で始めたのですが、やり込むとソロでもいろいろなことができて楽しかったですね。

  • そういう意味で、『グラブル』に“召喚石”が出てくるのは、『FFXI』の影響もあるのでしょうか?

  • 木村

    多少は影響があるかもしれません。『グラブル』では主人公が召喚するのではなく、星晶獣を召喚できる女の子ルリアが一緒にいる形ではありますが。

  • 影響といえば、大学生時代に『FFXI』をプレイしたことは、その後の進路にどのような影響を与えましたか?

  • 木村

    当時はずっと実家で『FFXI』をプレイしていて、親に「そんなにゲームをやっているなら、ゲームでお金を稼ぎなさい」と言われていましたね。そのときは「そんなに甘い世界じゃない」と返していたのですが、実際いまゲームクリエイターになりました(笑)。それくらい『FFXI』は僕にもっとも影響を与えたゲーム、原点であり、このゲームがなければおそらくゲーム業界には入っていないと思います。ですから、『FFXI』がなければ、僕が作ったゲームはこの世に存在していませんし、僕が作るゲームには何かしら『FFXI』の影響があると言っていいかもしれません。

  • 大学を卒業して、すぐにゲーム業界に入られたのですか?

  • 木村

    いくつか面接は受けたのですが、大学院まで通ったので親を心配させたくなくて、最初はまったく毛色の違う商社に入りました。しかしあまり合わなくて、会社を辞めたときに「自分が本当に好きなものに挑戦してみよう」と思い、シリコンスタジオに入りました。その後、そのときの上司の渡邊(渡邊耕一氏。サイゲームスの設立者で同社代表取締役社長)が独立してサイゲームスを作って僕も移り、いまに至ります。

再度プレイして感じた『FFXI』の“いまの楽しさ”

  • 『FFXI』を集中してプレイされていたのは、どのくらいの期間ですか?

  • 木村

    ゲーム業界に入ってからは忙しくてプレイができなくなったのですが……確か、ヴォイドウォッチが実装されたころ(2011年5月)までずっとプレイしていたと思います。その後『アドゥリンの魔境』(2013年3月発売)が出て少ししたあたりで復帰して、1年くらい遊んだところでまた忙しくなりプレイができなくなって……。そして『ヴァナ・ディールの星唄』(以下、『星唄』)の後にもう1回復帰しているので、3つの期間でプレイしていることになります。

  • トータルで見ると、プレイしていない期間のほうが短いですね(笑)。

  • 木村

    確かに、けっこうやっていますね(笑)。

  • それらのプレイの中で、もっとも印象深い思い出はなんですか?

  • 木村

    思い出はいろいろありすぎて悩みますね……。まずは、初めてリンクシェル(LS)をもらったときの思い出でしょうか。ジュノにたどり着いたとき「コケコケ」言っている謎の人がいて、いきなりLSをもらって入ったのですが、そこでたくさんの仲間ができました。ミッションや難しいクエストなど、なにをするにもそのLSで挑戦して、とても楽しかったですね。プロミヴォンなど、すごく苦労したミッションもありましたが、その大変さも含めていい思い出です。

  • 装備品に関する思い出はいかがですか?

  • 木村

    定番ですが、デュエルシャポー(赤魔道士のレリック装束の頭部位)を手に入れたことですね。当時は社会人になりたてだったので、毎週土曜か日曜の朝にデュナミスに通って時間をかけて取りましたが、取ったときはうれしかったです。気絶するぐらいに(笑)。あとは、2009年の夏にマンダウ(短剣のレリックウェポン)を作ったことも思い出深いです。

  • 2009年時点のレリックウェポン制作は、かなりたいへんだったのでは?

  • 木村

    旧貨幣はギルで集めました。デュナミスの出口で待っていて、出てくる人たちに声をかけて売ってもらったりしていましたね。

  • マンダウ以外にも思い出の武器はありますか?

  • 木村

    クラーケンクラブ(時々2-8回攻撃の片手棍)やジュワユース(時々2回攻撃の片手剣)が好きでしたね。あとは武器ではないですが、いまだに“海霊の免罪符”という文字を見るとうれしくなります。後衛ジョブでプレイしていたこともあって、ゼニス装備はどれもいいものでした。いまでは使うことはないですが、各部位1個ずつ持っています。あと、“光布”という文字も、いまだにときめきますね(笑)。当時はNMが落としたものを売ると800万ギルくらいになりました。いまではだいぶ価値も下がりましたが、それでも「いいアイテムが出たな」と思ってしまう。なぜでしょうね(笑)。アイテムの字面だけでうれしくなるゲームって、なかなかないですよね。

  • つぎに、いちばん記憶に残っているミッションやクエストをお聞かせください。

  • 木村

    最近、サブのキャラクターをバトルコンテンツ“オーメン”に参加させたくて、ミッションをもう一度全部プレイしたのですが、『アルタナの神兵』のリリゼットのエピソードはいい話ですよね。当時はクリアすることに精一杯でしっかりストーリーを把握できなかったり、つぎのバージョンアップまで時間が空いて話を忘れてしまうこともありましたが、ほかのミッションも含め、一気にプレイすると新たな発見や感動があります。あとはやはり、『星唄』のストーリーが『FFXI』のシナリオの中でいちばんすばらしいと思うので、『FFXI』をプレイしていて『星唄』を知らない人は、ぜひ体験してほしいです。今回の『グラブル』とのコラボの舞台が『星唄』の時間軸になっているのも、『星唄』に興味を持っていただくためなんです。

  • 『FFXI』をイチからプレイし直したことで、「ここが変わった」、「ここがやりやすくなった」など、システム面で印象に残った部分はありますか?

  • 木村

    移動速度がすごく上がっていたり、“同じぐらいの強さだ”のモンスターを倒してもいっぱい経験値がもらえてレベルが上がりやすくなっていたりと、すごくプレイしやすくなっていると感じました。いちばん便利になったのはエリア間のワープでしょうか。あと、マウントに自由に乗れることにも驚きました。それと同時に、これまでの歴史の中で蓄積された、とんでもない量のコンテンツが待っているな、と思いましたね。

  • フェイスの実装で、それらの多くをソロでプレイできますからね。

  • 木村

    フェイスも衝撃的なシステムですね。ひとりでパーティプレイができてレベル上げもできて……。とにかく現在の『FFXI』はいろいろと緩和されていますし、いまでも楽しめるゲームだと思っています。

  • 現在はどのようなプレイをされているかお聞かせください。

  • 木村

    復帰してから当時作れなかった、いわゆる“伝説武器群”はけっこう作りました。最初に作ったのはトゥワシュトラ(短剣のエンピリアンウェポン)です。そのあとにニルヴァーナ(両手棍のミシックウェポン。召喚士専用)を作って、さらにシャンデュシニュを赤魔道士で撃つときのために作りかけだったアルマス(片手剣のエンピリアンウェポン)も作りました。あとはクロセアモース(赤魔道士のジョブマスター専用片手剣)も持っています。条件によってはセラフブレードで7万ぐらいのダメージが出て驚きました(笑)。赤魔道士の最強ウェポンスキルがセラフブレードになるとは、昔では信じられないですね。

  • いまは赤魔道士で活動することが多いのですか?

  • 木村

    そうですね。あとは黒魔道士、シーフ、召喚士でもプレイしています。復帰したときに「召喚士が強いよ」と言われて「マジ!?」と驚いたことをきっかけに、ニルヴァーナを作り始めました。アレキサンドライトを3万個集めるとか、アサルト全種を再度クリアするなどの苦労を考えると、かつては「ミシックウェポンはとても作れない」と思っていたので、まさかその後に自分が作れるとは思いませんでしたね(笑)。

  • つぎに作りたい武器などはありますか?

  • 木村

    短剣のイオニックウェポンであるエーネアスを作りたいです。ほかにも王将の袖飾り(オーメンに出現するNM・Ouが落とす両手装備)が欲しくて月イチで倒していますが、なかなか出ないですね……。上位バトルフィールドの“★神竜”も赤魔道士ソロで“むずかしい”をこなしていますが、ドロップが渋すぎます! 最初、“★翼もつ女神”でマリグナス装備を取るところから始めたのですが、あちらのほうは10回に1個くらいは出る印象です。“★神竜”はとにかく防具がぜんぜん出ないんですよ(笑)。

  • 現在のプレイといえば、木村さんは声優・加藤英美里さんの『FFXI』配信に何度も出演されていますが、ゲームクリエイターが他社のゲームの配信に参加するのは非常に珍しいケースかと思います。これはどのようないきさつがあったのですか?

  • 木村

    『グラブル』の生放送などで加藤さんにお会いしたときに、話の流れで「出てみませんか?」と声を掛けていただいたのがきっかけです。自分も『FFXI』がすごく好きなので、「ゲーム実況をやるなら『FFXI』をやりたい!」と思っており、さらに加藤さんが楽しそうにプレイしているのを見て、福原(福原哲也氏。『グラブル』ディレクター)も誘って参加させていただきました。

  • 周囲の反応はいかがでしたか?

  • 木村

    「見ましたよ!」といったことはよく言われましたね。そのあと今回のコラボの話が進み、スクウェア・エニックスの方々にお会いしたときにも「見ました!」と言われて恐縮しました(笑)。

  • 声優の今井麻美さんも含め、レベル50で闇の王に挑んだ企画はおもしろかったですね(笑)。

  • 木村

    特別ゲスト(かつて全ワールドで最初に闇の王を倒したAposさん)を迎えて挑みましたが、いま挑むと闇の王も弱く感じますね。「こんなにも冒険者が強くなっているんだ」ということを実感しました。

  • 昔はレベル55で挑むのも非常にきびしかったですからね。

  • 木村

    ハイポーションをたくさん使わないと、すぐにやられましたね。昔はマジックバーストもレジストされにくいだけで、あまりダメージは増えなかったと記憶しています。それがいまでは連携やマジックバーストでものすごいダメージが出るので、それで勝てた形でしょうか。でも正直、もっとボロボロになりたかったです(笑)。

『FFXI』は僕のゲームの教科書であり、第2の故郷のようなゲーム

  • 『FFXI』が20周年を迎えた一方で、『グラブル』も3月に8周年を迎えました。長期的な運営や、物語を長く展開するという点で共通点は感じますか?

  • 木村

    メインストーリーを担当している福原には別の考えがあるかもしれませんが、自分としては『FFXI』と『グラブル』のストーリーのスタイルは、基本的に異なると思っています。追加ディスクや追加シナリオといった節目で新たな展開やヒロインが登場して……といった形でもないので、直接的に参考にはしていません。『グラブル』の側で言うと、まだイスタルシア(『グラブル』の主人公が目指す空の果ての島)にたどり着いていませんし、いわば『FFXI』におけるランク10のミッションが完結していないようなものですから。ただ、「ゲームシステムのアップデートをどのようにおこなっていくか」といった部分では、すごく参考になります。

  • 具体的にはどのような点でしょうか?

  • 木村

    アップデートのしかたやゲームの拡張のしかた、そして“運営が10年を超えたときにどうしたらいいか”など、『FFXI』は僕のゲームの教科書です。なんと言っても、自分自身の中に、“『FFXI』でどういうアップデートがあって、それをプレイヤーがどう受け止めたか”という知識が20年ぶんあるわけです。それが『グラブル』に限らず、すべての運営型ゲームで生きています。たとえば、何かを追加するにしても“運営の何年目に追加するか”でぜんぜん印象や評判が違ってくるので、タイミングがとても大事ですね。そういうことも『FFXI』をプレイしていたときの記憶から引っ張り出して、参考にすることがあります。

  • そんな『FFXI』と『グラブル』のコラボについて、この記事の公開時は、いよいよイベント後半に突入しているころかと思います。後半の見どころをお聞かせください。

  • 木村

    イベントの最初にプレイヤーの分身である冒険者の種族を選べるのですが、その結果となるシーンがいよいよ登場しますのでご期待ください。

  • こちらの要素を設定した意図や苦労した点はなんでしょうか?

  • 木村

    『グラブル』のコラボイベントでは、普通はコラボ作品の主人公が登場します。しかし『FFXI』の場合、主人公=プレイヤーの分身でもあるので、種族やフェイスタイプなどが違うとプレイした人にとっては「これではない」となってしまいます。とはいえ、やはり『FFXI』での自キャラがコラボ内で活躍する姿は見たいと思うので、今回は『星唄』のストーリーの中で神になった冒険者が、シルエットで助けてくれるようにしました。制作時の苦労は種族が多いことですね(笑)。

  • どのようなイベントシーンになるか楽しみです。ガルカとタルタルでは、かなり印象も違って見えそうですね。

  • 木村

    個人的にはタルタルが一番いいですね(笑)。黒帯クエストの武神様のような“達人感”がすごいので。

  • 最後に、改めて『FFXI』が“ひとりのプレイヤーである木村さんにとってどういうゲームなのか”と、“ゲームクリエイターとしての木村さんにとってどういうゲームなのか”をお聞かせいただけますか。

  • 木村

    まず、ひとりのプレイヤーとして、『FFXI』は大切なことを教えてくれたゲームだと思っています。人との出会いであったり、みんなでがんばって何かをするという達成感であったり……。そして、僕が住んでいるもうひとつの世界がヴァナ・ディールだな、と感じますね。ひさしぶりに復帰したときも、故郷に帰ってきたかのような気分になったのを覚えていて、第2の故郷のようなゲームです。ゲームクリエイターとしては、先にお話ししたようにゲーム業界に入るきっかけになったゲームですし、僕のクリエイターとしての原点が『FFXI』です。20年のあいだにいろいろな変化があったと思いますが、それらをリアルタイムで体験したことが、僕の仕事のうえで糧になっていますし、ゲームクリエイターとしての宝物だと思います。

  • 『FFXI』の20周年にあたり、『FFXI』自体と『FFXI』のプレイヤーの方々に向けてメッセージをお願いいたします。

  • 木村

    まずは、『FFXI』20周年おめでとうございます。運営型のゲームをどこまで続けられるかという課題について、かつて僕は“10年”をひとつの指針として掲げていた時期がありました。『神撃のバハムート』をリリースしたときにも、会社で「10年続けます。『FFXI』が10年やっていますから」と言っていたのを覚えています。当時は、10年も続くソーシャルゲームがなかったこともあり、「さすがに10年も続かないだろう」という雰囲気がありました。でもおかげさまで『神撃のバハムート』は10周年を迎えました。そして『FFXI』が20周年を迎えたことで、つぎは“20年は続けられる”という気持ちが生まれました。そのように『FFXI』は僕らに勇気をくれますし、お手本のゲームとしてすごく敬意を持ち、すごく尊敬しているゲームです。ここまで開発スタッフの方々もいろいろな苦労などがあったかと思いますが、「すばらしいゲームの開発を続けていただいてありがとうございます」と言いたいです。

     そして冒険者の皆さんとは、これからも『FFXI』をいっしょに楽しんでいければ、と思います。僕もひとりのプレイヤーとして冒険していますが、ヴァナ・ディールでの楽しみかたは無限大です。もし僕が“Shout”したらぜひ乗ってください。僕が復帰したころには固定パーティが多くなり、以前より“Shout”が少なめなのが寂しくて……。僕は“Shout”の文化がすごく好きで、「興味のある募集が流れてこないかな」とチャット欄を眺めたり、“Shout”をきっかけにして、いままで知らなかった人と知り合えたりフレンドが増えたりすることが楽しみでした。そういう時代が戻ってこないかな、と勝手に思っています。


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