松井プロデューサーが、『ファイナルファンタジーXI』(以下、『FFXI』)とゆかりのある人物と対談を行う“プロデューサーセッション -WE DISCUSS VANA’DIEL-”。第7回の対談相手は、スクウェア・エニックスを代表するクリエイターのひとりであり、『FFXI』でも初期のさまざまなキャラクターデザインを手がけている野村哲也さん。完結編となるこのパート4では、『FFXI』の20周年、そして『FF』シリーズの未来について野村さんが語る!
スクウェア・エニックス、そして『FF』シリーズの主要クリエイターのひとり。野村氏が生み出したクラウド、ティファ、エアリス、スコール、ユウナ、ライトニングらのキャラクターは、『FF』というIPをこれまで以上に世に知らしめる立役者となった。また、『キングダム ハーツ』シリーズではディレクターを担当しており、こちらも同社を代表するシリーズとして今年(2022年)に20周年を迎える。
この先の『FFXI』、この先の『FF』シリーズ
『FFXI』はいよいよ今年(2022年)5月に20周年を迎えます。
- 野村
本当にすごいことだと思います。プレイヤーとしても開発者としても、ひとつのことを20年もやり続けるというのは、なかなかできることではないですよね。自分はつねにいろいろなことにチャレンジせずにはいられないタイプなので、MMO(多人数同時参加型オンライン)RPGの開発・運営を長期間続けている松井さんのことも、すごいなと思っています。
- 松井
MMORPGに関わると、ほかのタイトルのことがいっさいできなくなるのが宿命だからね。
- 野村
それと、あくまで個人的にですが、これほどの長きにわたって大勢のプレイヤーが『FFXI』を楽しんでいるわけで、それなら新たなプレイヤーへのアプローチも可能性があると思うんですよね。これまで培った開発リソースや運営ノウハウを生かして。
それはいいですね。
- 野村
個人的な思いですけどね(笑)。もちろん、いまのライフスタイルに合わせてゲームを調整する必要があるし、現実的には課題も多いかと思いますが、この先、イチから遊びたい人が気軽に手に取りやすい環境があるといいですよね。ここ数年間は、スマホ向けのオープンワールドゲームやMMORPGが続々と登場していますし。
以前、石井浩一さん(『FFXI』初代ディレクター)にお話をうかがう機会があったのですが、「スクウェアのモノ作りの精神は、野村さんに引き継がれている」というようなことをおっしゃっていました。
- 野村
石井さんが退社される際に、同じことを直接言い残されました。同じチームで関わったことはほとんどなかったのですが、いつも目を掛けてくださっていて、うれしかったです。
野村さんに対してはいろいろと感じているということでしょうか。
- 松井
テツ(野村氏の愛称)は『FF』のナンバリング作品だけじゃなく、スピンオフや関連シリーズもたくさん手掛けているからね。歴代の全スタッフの中で、『FF』と付くタイトルにもっとも多く関わっているはずです。だから、少なくとも古株のスタッフにとっては“『FF』を体現するクリエイター”として認知されているし、石井さんとしてもテツに『FF』シリーズの未来を託している部分があるのではないかな。
野村さんとしては、ここまで巨大なIPとなった『FF』シリーズの精神を受け継ぐことに対して、プレッシャーはありますか?
- 野村
受け継いだのは北瀬(北瀬佳範氏。『FF』シリーズのブランドマネージャー)だと思っています。坂口さん(坂口博信氏。『FF』シリーズの生みの親のひとり)とは師弟関係のように見えていたし、いまでも親しいですからね。自分も『FF』を開発する際は、言葉では言い表せない一種の勘どころがあるのを感じます。北瀬や自分は坂口さんと仕事をしてきたので、そういった部分を肌で感じ取っていると思います。
これからの野村さんの活躍に大いに期待しています。それでは最後に、『FFXI』のプレイヤーに向けてメッセージをお願いします。
- 野村
20年もの長きにわたって『FFXI』をプレイしてくれて、ありがとうございます。ぜひ、これから先の20年も遊んでください!
- 松井
そのころには僕は定年を迎えていますね。テツもだけど(笑)。